2021年4月~2022年3月、開院2年目の当院におけるてんかん診療実績を公開致します。
2020年度の実績は以前の記事をご参照ください。
診療実績概要
2021年度のてんかん診療の概要をお示しします。
1年間に通院実績のあるてんかん診断症例(実数):317名
1年間の脳波件数:609件
てんかん患者の症候群分類を表1にお示しします。
てんかん症候群 | 患者数 |
特発性全般てんかん(小児欠神てんかんを除く) | 65 |
ローランドてんかん | 29 |
小児欠神てんかん | 23 |
Panaiotopoulos症候群 | 7 |
West症候群 | 7 |
熱性けいれんプラス | 5 |
Lennox-Gastaut症候群 | 5 |
Dravet症候群 | 5 |
良性乳児けいれん | 2 |
環状14番染色体症候群 | 2 |
MECP2重複症候群 | 2 |
ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん | 1 |
乳児良性ミオクロニーてんかん | 1 |
進行性ミオクロニーてんかん | 1 |
SCN8A関連てんかん | 1 |
症候群分類不能 | 160 |
てんかん患者の年齢分布
てんかん患者様の年齢分布を2020年度と2021年度で比較したものを図1にお示しします。
院長が小児神経科医であるため小児科年齢(15歳以下)が約半数を占めておりますが、開業1年目の2020年度と比較して2年目である2021年度は16歳以上の比率が増えていることがわかります。
小児科からの移行を目的にご紹介頂くことが増えてきており、当院の「おとなになっても通院できる」という理念が周辺の連携医療機関様にもご評価頂いていることを実感しております。
てんかん分類
てんかん分類別に表2に、てんかん症候群分類を図2にお示しします。てんかん分類についての詳細はてんかんの分類をご一読ください。
素因性 | 構造的 | 感染性 | 代謝性 | 免疫性 | 病因不明 | |
全般 | 36.3% | 0.3% | 0.3% | 0.0% | 0.0% | 0.3% |
焦点 | 35.6% | 12.9% | 0.3% | 0.0% | 0.6% | 0.0% |
全般焦点合併 | 4.1% | 1.9% | 0.3% | 0.3% | 0.0% | 0.0% |
病型不明 | 2.2% | 0.3% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.6% |
2020年度と比較しても概ね同様の傾向でした。
当院は小児科から成人期への移行の方が多くいらっしゃいますので、若年発症の特発性全般てんかんの患者様や、治療抵抗性の発達性てんかん性脳症や構造的焦点てんかん、全般焦点合併てんかんの方が多いことが特徴的かと思います。
なお、小児欠神てんかんは発症年齢が就学前後と低年齢でローランドてんかんやパナイトポーラス症候群に近く、その他の思春期発症の特発性全般てんかんと異なり成人移行することも少ないことから当院では区別して分類しております。
院長を始めとして鈴木先生、宮奈先生と3名の小児神経専門医が毎日外来を担当しておりますので、「気軽に受診しやすい専門外来」としてご活用頂けているかと思います。
主治医の外来を受診する場合も多くの総合病院より外来枠は多いですし、急を要する相談や病状が落ち着いているので処方だけで良い場合でも毎日専門医の診察を受けることができる点は、「毎日専門診療を受けることのできるかかりつけ医」として便利であるとご好評頂いております。
おかげさまで、周辺のてんかんセンターや総合病院より難治で発作回数の多い患者様をご紹介頂けることが多く、日常の細かな内服調整は当院で対応させて頂き、入院が必要な場合やより高度な検査が必要な場合は病院にご紹介する形でしっかりと連携を取らせて頂いております。
薬物治療
現在内服中の抗てんかん薬の薬剤数の内訳を図3に示します。
薬剤数は2020年度と概ね変わりありませんでした。
複数の抗てんかん薬を継続されている患者様の薬剤調整のご依頼をお受けすることも多く、3剤以上の方を2剤や1剤に減薬できた方も多くいらっしゃいます。
その一方で当院は比較的難治の方が多いため、どうしても複数の抗てんかん薬を使用せざるを得ない患者様も多くいらっしゃいます。
複数の抗てんかん薬で発作を抑えきれない方、発作のコントロールがつかず発達への影響が懸念される方に関しては、外科的治療を検討するために連携しているてんかんセンターへご紹介させて頂いております。
重複を含む抗てんかん薬の内訳を図4に示します。レベチラセタム(LEV)が約半数と引き続き最多でした。次いで古くから全般てんかんの第一選択薬であるバルプロ酸ナトリウム(VPA)、ついでラコサミド(LCM)、カルバマゼピン(CBZ)、ラモトリギン(LTG)が続いています。全般てんかんにも焦点てんかんにも有効性が高く、薬物相互作用が少なく、長期的な副作用が少ないことから新規抗てんかん薬の割合が増えてきていることがうかがえます。
当院では難治てんかんの方も比較的多いため、ドラベ症候群専用薬であるスティリペントール(STP)やレノックス・ガストー症候群専用薬であるルフィナミド(RFN)も一定の割合を占めています。
*薬剤名はすべて商品名ではなく一般名で記載しております。
開院してちょうど2年が経過致しました。
患者様を始め、周辺の医療機関様、その他関係機関の皆様、患者様の支援者の皆様、そして何よりも当院スタッフに支えられた2年間でした。この場を借りて皆様に感謝申し上げます。
この診療実績のまとめが、今後当院への受診を検討されている患者様やご家族様、患者様のご紹介をご検討頂いている医療機関様の参考になりますと幸いです。
今後も1年おきに年度の情報をまとめて公開していく予定ですのでよろしくお願い致します。